「墓地強化と効果のコンボ、それが君の【ライトロード】デッキか。10ターン以内というのは、墓地強化の反動で起こる君のデッキの限界ということだったわけですね」
「これだけで全てを知った気になって貰っては困るな。デッキ切れを想定した発言でもあるけど、勿論勝利宣言でもあるから」
「口だけにならないと良いね、今度はこちらの番だ。僕のターン、ドロー!」
強気な発言をしているが、4体のモンスターが居る
のフィールドに対してアモンのフィールドは先程のターンでがら空きとなってしまっている。
アモンは此処からどのように巻き返すというのか。
「僕は【召喚雲】の効果を発動、墓地から【雲魔物―ポイズン・クラウド】を特殊召喚。墓地からの召喚を行ったことで【召喚雲】は破壊される。次に墓地の【雲魔物―羊雲】を除外して、【雲魔物―ストーム・ドラゴン<☆4 1000/0>】を特殊召喚。そしてもう1体、【雲魔物―キロスタス<☆4 900/0>】を手札から召喚」
「一気に3体、貴方の【雲魔物】のコンボも侮れないね」
「そう、【雲魔物】の効果はこれだけではない。【雲魔物―ストーム・ドラゴン】の効果、1ターンに1度だけフィールドのモンスター1体にフォッグカウンターを置くことが出来る」
「フォッグカウンター、1ターン目の【雲魔物―アルトス】にも乗せていた……」
「あの時はカウンターが貯まる前に君に破壊されてしまったがね。しかし、今度はそうはいかないよ。僕がカウンターを乗せるのは【雲魔物―キロスタス】、このモンスターは召喚に成功した時にフィールドに存在する【雲魔物】と名の付くモンスターの数だけフォッグカウンターを乗せることが出来る。つまり今【雲魔物―キロスタス】に乗っているフォッグカウンターは全部で4つというわけだ」
カウンターは最低2つからコストとする場合が多い。
アモンのこの様子からすると、【雲魔物―キロスタス】のコスト条件は既に満たしているのだろう。
何か来る。
自分のフィールドには4体の【ライトロード】と2枚の伏せカードがあり万全に近い状態であるが、それでも
は良くない兆候を感じた。
「【雲魔物―キロスタス】の効果発動。このカードに乗るフォッグカウンターを2つ取り除くことで、フィールドのモンスター1体を破壊する。僕が破壊するのは【ライトロード・ビースト ウォルフ】【ライトロード・ウォーリアー ガロス】の2体」
「ウォルフ! ガロス!」
「これで君の場には攻撃力の高いモンスターは居なくなった。攻撃に入る前に、手札から【サイクロン】発動しておこうか。君の場の伏せカードを1枚破壊する」
リバースされ、破壊されたのは【炸裂装甲】。
攻撃をされた場合に備えて
が伏せていたカード。
アモンがそのまま攻撃をしていたならば、前のターンと同様にモンスターを破壊されていただろう。
あっと言う間にモンスターを2体まで減らされた
を、更にアモンの攻撃が襲う。
「やはり警戒をしておいて良かった。これで君を守るものはもう無い、これまでの様子から同効果を持つカードを同時に伏せるということは無いだろうからね。【雲魔物―キロスタス】で【ライトロード・ハンター ライコウ】を攻撃!」
「墓地の【ネクロ・ガードナー】を除外して、効果を発動!! 相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする」
「それなら【雲魔物―ストーム・ドラゴン】で攻撃だ。もう防ぐ手はあるまい」
「……っ。ごめん、ライコウ」
アモンの読み通り、フィールドに伏せられたカードは発動されることはなかった。
続く2体目の攻撃に
に成す術は無く、ただ消えていくライコウを見詰めることしか出来ない。
はじめのLPから攻撃力の差分800が引かれる。
アモンの攻撃まだ続く。
「そして3体目【雲魔物―ポイズン・クラウド】で【ライトロード・サモナー ルミナス】を攻撃!」
「攻撃力0のモンスターで攻撃? 一体何を……!」
が全てを言い終わる前に、【雲魔物―ポイズン・クラウド】は【ライトロード・サモナー ルミナス】に返り討ちに合う。
当然ダメージを受けたアモンのLPから1000引かれる。
「っ……【雲魔物―ポイズン・クラウド】が戦闘で破壊され墓地に送られたことでその効果が発動する。このカードを破壊したモンスターを破壊し、相手LPに800のダメージを与える!!」
「うっ……」
「これで君の場にモンスターは居なくなった、形成逆転だね。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
【ライトロード・サモナー ルミナス】を越える攻撃力を持つモンスターはアモンの場には居なかった。
【雲魔物―ストーム・ドラゴン】ならば相打ちにすることは出来るが、モンスターを1体減らすことになる。
そこで【雲魔物―ポイズン・クラウド】の効果を使ったのだろう。
【雲魔物―ポイズン・クラウド】は破壊され自分もダメージを受けるが、はじめにもダメージを与えることが出来る。
また【雲魔物―ストーム・ドラゴン】が残っていれば、次のターンに新たにフォッグカウンターを乗せられる。
全て計算した上での攻撃だったということだ。
破れる筈が無いと思っていた4体のモンスターは全て破壊された。
のフィールドに残っているのは、僅か伏せカード1枚のみ。
その手札もまた、1枚しか無かった。
LPでは勝っているとは言え、せっかく揃えたモンスターが破壊されたのだ。
有利な状況から一転して不利な状況に突き落とされたことで、その闘争心を失ってサレンダーをするのではないかと危惧した生徒も少なくはない。
会場は静まり返り、固唾を呑んで展開を見守っていた。
「君が宣言した10ターンまで残り5ターン。その手札でどうする?」
「私のターン、ドロー」
アモンの言葉など、まるで聞こえていないかのように
はドローをする。
現在の
の思考は『どうやってアモンに勝つか』その一点に収束されており、他のことを考えている余裕は無かった。
ドローした1枚のカードから勝利への過程を見出したことで、
の思考は漸く現実へと戻る。
顔を上げてアモンを正面から見据えたその瞳には、諦めの色などは微塵も無かった。
「5ターンなんて言わない、このターンで勝負を決めよう。そうだな……もしもこのターンで貴方を倒せなかったら、サレンダーするよ」
「僕のLPはまだ4900も残っている。モンスターも居ないのに、それをこのターンで削ってみせると。面白いな」
圧倒的不利な状況に置かれている
によってされた、まさかの勝利宣言。
しかもこのターン中に勝利してみせると言う。
「
は何を無茶なことを言っているノーネ」
「そうでアール。ただでさえ負けそうだというのに、このターン中に勝利するなんて。正気の沙汰じゃないのでアール」
「そうでしょうか? わたしは
くんが何の考えも無しに言っているとは思いませんよ。クロノス教諭も、
くんの実力は良くご存知でしょう」
教師陣からも理解不能だと言う声が上がるが、唯一鮫島校長だけは
を擁護した。
校長の言うように
の実力を知らないわけでは無い。そして、確信もなくそのようなことを言う生徒では無いことも分かっていた。
だから、クロノス教諭達もそれ以上は何も言おうとはしなかった。嘘か真か。全てはこのターンが終われば分かることだった。
「手札より魔法カード【ソーラー・エクスチェンジ】を発動。手札の【ライトロード】を墓地に送り、デッキから2枚手札に加えて、その後2枚を墓地に送る」
「まずは手札補強か。勝利宣言をした割に未だ決め手に欠けているということかな」
「更に手札より魔法カード【光の援軍】を発動。デッキから墓地に3枚カードを送ることで、レベル4以下の【ライトロード】をデッキから手札に加えることが出来る」
2枚の魔法カードの効果によって
の手札は3枚に増えた。
その内1枚は【ライトロード】である。
新たな【ライトロード】シリーズの召喚か、と観客は色めき立つ。
盛り上がる周囲に対して、
の宣言通りになればこのターンで敗北することになる筈のアモンはあくまで落ち着き払っている。
「どんなにモンスターを召喚しようとも、このターンで僕を倒すことは不可能だよ」
「一部の【雲魔物】は戦闘では破壊されない効果を持つ。そして貴方の自信を裏打ちするのは、その伏せカード。恐らく、自分フィールドにモンスターが存在する限りコントローラーへのダメージを0にするもの。どう、違う?」
「その通り。君ならばあらゆるテキストを暗記しているのではないか予想はしていたけれど、実際当てられてしまうとつまらないね。それで、僕の戦略を読んで君はどうする?」
「ダメージが0になるのはモンスターが居るから。そして戦闘で破壊出来ないなら――効果で破壊すれば良い。手札から魔法カード【ライトニング・ボルテックス】発動! コストとして手札より【ライトロード・マジシャン ライラ】を墓地に送り、相手フィールド上の表表示モンスターを全て破壊する!!」
降り注ぐ雷がアモンのフィールドの【雲魔物】を全て破壊する。
二人のフィールドはモンスターが存在せず1枚のカードが伏せられている、そんな合わせ鏡の状態となった。
しかし、
だけは今からモンスターの召喚を行うことが出来る。
残りの手札は1枚。
あのカードが攻撃力4900を越えるカードなのだろう。
誰もがそう考えたが――
「手札から【創世の預言者<☆4 1800/600>】を攻撃表示で召喚」
予想に反して召喚されたのは攻撃力1800のモンスターだった。
レベル4以下のモンスターでこの攻撃力は通常であればそれなりに高いと見做されるだろう。
けれども今は特殊な状況下であり、このターン中にアモンのLP4900を削らなくてはいけないのだ。
そんな状況において、期待外れと感じてしまうのも仕方ないことだった。
「そのモンスターで攻撃しても、僕のLPはまだ3000も残るよ」
「誰がこれで終わりだなんて言った? キーカードの登場はこれからだ」
「君の手札はもう無い、これ以上何が出来る?」
「フィールドに残ってるさ。リバースカードオープン【閃光のイリュージョン】!!」
リバースされたカードには【ライトロード・サモナー ルミナス】が描かれている。
そのことから、このカードもまた【ライトロード】シリーズの補助カードなのだと分かる。
「【閃光のイリュージョン】は、自分の墓地から【ライトロード】のモンスターを攻撃表示で特殊召喚することが出来る」
「それで【ライトロード・ビースト ウォルフ】を召喚したとしても、LPを0にするにはまだ足りないな」
「まだ分かってないのか。さっきの2枚の魔法カードの目的は手札増強じゃない、墓地強化だよ。目当てのカードを墓地に送る、その為であって手札のカードはおまけに過ぎないんだ」
モンスターを破壊され、このまま勝負を続けてもアモンが勝てる可能性は低い。
それでもアモンが落ち着いていられたのは、このターンでLPを0にするなんてことは到底不可能だと思っていたからだ。
このターンさえ凌げれば
はサレンダーをする。その筈だった。
「墓地から【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス<☆6 2000/1600>】を攻撃表示で召喚! 【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス】は墓地に存在する【ライトロード】と名の付くモンスターの種類×300、その攻撃力を上げる。墓地にある【ライトロード】は全部で6種類、よって攻撃力は3800!!」
2枚の魔法カードによる墓地強化。
それは【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス】の効果を発揮する為により多くの【ライトロード】を墓地に送ることだった。
【光の援軍】で【ライトロード・マジシャン ライラ】を手札に加え、【ライトニング・ボルテックス】のコストとして使ったのもその為である。
【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス】で勝ちに行くと決めた時から、
は1枚でも多くの未だ墓地に無い【ライトロード】を墓地に送ることを目指していたのだ。
「【創世の預言者】と【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス】でプレイヤーにダイレクトアタック」
「うわぁぁぁぁっ!!」
「有言実行、雲なんかにライロ達は負けないよ」
ね。と確認するように、
は【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス】の身体に触れる。
実際に触れることは出来ないが、そこは気持ちの問題なのだろう。
の問い掛けに微かに頷くような素振りを見せた後、【ライトロード・ドラゴン ドラゴニス】は消えていった。
◆◆◆
不可能と思われた状況から見事な逆転劇を見せられた会場は、勝敗が決したと同時に歓声で溢れ返った。
客席から掛けられる声援に適当に手を振り返しながら、は対戦していた相手へと近付いていく。
ソリッドビジョンの衝撃で崩れ落ちていたアモンは、がその直ぐ傍まで来るまでに立ち上がり、迎え入れた。
「完敗だったよ。流石は『ペガサスミニオン』のと言ったところかな」
「枕詞のように『ペガサスミニオン』を付けるのは止めて欲しいな。それに、全力を出していなかった相手に褒められても嬉しくはない」
「……気付いていたのか。いつから?」
この騒ぎではリング上の声など周囲に聞こえないとは思うが、それでもは声を潜める。
内容が内容であるが故に、あまり聞かれて良い話ではないと思ったからだ。
の言葉にアモンは驚いたように眼を見開きながらも否定はしなかった。
アモンのそんな様子には呆れたように溜息を吐き出す。
そこには決闘中にアモン向けられていた辛辣さは既に無かった。
「3ターン目からだよ。あの状況で上級モンスターを召喚しないのはどう考えてもおかしい。あ、手札に無かった、という言い訳は認めないよ。貴方のデッキなら上級モンスターを手札に呼び込むことも可能だろうから」
「そこまで分かっているなら言い訳はしないよ。確かに僕は手を抜いていたが、それは君の実力を疑っていたわけではない」
「他に理由があると?」
「今の時期から実力を知られてしまうと、これから先の決闘で困ることになるからさ」
最もらしい理由であったが、イースト校のチャンピオンにまでなった生徒がそんなことを気にするとは思えない。
分かりやすい嘘。すなわちこれ以上は聞くなということなのだと分かり、は再度溜息を吐く。
「話したくないなら聞かないから、はっきりそう言って。特に知りたいというわけでもないし」
「物分りが良くて助かるよ」
「代わりにと言っては何だけど、貴方が知っていることをこれ以上、他の人間に話さないで貰えると嬉しい」
「分かっているよ。僕自身が気になって調べただけで、言い触らすつもりは最初からなかったからね」
「あ……ともう一つ。その内で良いから、本気で相手して貰える?」
「君さえ良ければいつでも構わないよ。」
ここに来て、漸くは笑顔を見せると、その手をアモンへと差し出す。
そしてアモンも、微かな笑みを浮かべて握り返すのだった。
死闘を演じた二人が握手をしたことで、両者を讃えるように会場からは一際大きな拍手が沸き起こる。
それを合図に、エキショビジョンマッチ第一戦は終わりを迎えることとなった。